Al bar: バールにて

 初めてイタリアに行ったとき、ローマのバールでこんな経験をしました。生ジュースを注文したつもりが、通じ ていなくて、出てくるとタダのファンタ・オレンジ。どうしても絞りたてのオレンジ・ジュースが飲みたかった私と連れは、身振り手振りと英語であれこれやっ ていました。でも通じない。ま、いいか、とあきらめかけたとき、そばにいた革ジャン姿のお兄さんが、ナチュラル・スピードのイタリア語(ローマ弁?)で何 やら話しかけてきました。「???(^^;)」と首をかしげていると、彼はスクィザーでオレンジを絞るジェスチャーをします。私たちが「それそれ!!」と 叫ぶまでもなく、お兄さんは「ほら、この人たち、絞ったのがほしいねんて」と言ってくれたのです(たぶん)。店員氏は「あ、さよか」といって、オレンジ どっさりの生絞りジュースspremuta d'aranciaを作ってくれました。

―すごい!!! 日本語(と英語)しかわからん私らと、イタリア語しかわからんお兄さんが、 意志疎通してる!

 本当に「言葉がわからなくても通じた」この経験は、たいへん感動的なものでした。けれど、言葉がわかればもっと通じる!イタリアには、会話を楽しむのにうっ てつけのコミュニケーション文化があります。イタリアにいて人と話さずにいるのは、本当にもったいない。ある意味で、ウフィッツィを見ないよりもったいな いことかもしれません。総じて、相手の言うことを理解しようという積極的な姿勢の人が多いので、語学力云々を気にしすぎるより、肩の力を抜いて、まずは会 話する機会をもちたいものです。きっかけはどんなささやかなことでもいいのです。始まれば、どんどん発展していきますから。「イタリア語話す」のではなく、「イタリア語話す」つもりで。
(2000/7/2