Buongiorno―何はともあれあいさつから

 最近はだいぶ良くなったようですが、海外での日本人の買い物マナーは、何かとひんしゅくを買うことが少なく ないようです。とくに、店に入ってきても、あいさつの一言もしないということが、想像以上の悪印象を与えるようですね。そのせいか、(バブル期ほどではな いにせよ、金離れの点ではまだまだ上客の部類に入るであろうと思われるのに)店員さんの受けもあまりよくないようです。会社でも、学校の部活でも、90度 のお辞儀とかなんとか、あれほど仕込まれているのに、なぜなのでしょう???思うに、それは「あいさつ」に対する考え方の違いからくるようです。「ご挨拶 に伺う」という表現が象徴するように、日本の社会では、あいさつは、ともすると社会的立場が下の者から上の者への礼儀というふうに受けとめらるふしがあり ます。客と店員なら、「お客様は神様」ですから、店員は客に対して過剰なまでにていねいなあいさつをしますが、客の方はお金さえ払えば、それ以上のことは 必要ないような風潮が何となくあります。けれども、イタリアではあいさつは完全に双方向的なもの。お客様も人間、店員も人間。友だちと出会ったときも、学 校や職場に着いたときも、お店に入ったときも、とにかく人に対するときは、同じように気持ちよく、

Buongiorno!(こんにちは!)

の一言からはじめましょう。初級レベルの語学力をさして「あいさつ程度」という言い方をしますが、あいさつ で大切なことは、「こんにちは=Buongiorno」の等式を知っていることではなく、"Buongiorno!"を適切に使えることです。そう考える と、意外と使いこなせていないのが、基本的なあいさつの数々です。
 イタリアへ行ったら、いや、日本にいても、今日からあいさつを真に interactiveなものととらえ直して、ちょっと使い方を変えてみてはいかがでしょう?それが、感じよく、カッコよく、スマート に、"Buongiorno!"を使いこなす秘訣ではないでしょうか。

 それでは、あいさつのミニマム・エッセンシャルズを。
Buongiorno.(ブォンジョるノ):日中のあいさつ。Good morningGood afternoonを兼ねたものと思えばいいでしょう。
Buona sera.(ブォナセら):英語のGood eveningに当 たり、午後~夕方以降のあいさつですが、使いはじめる時間帯は、日本語の「こんばんは」よりもずっと早いです。はっきり決まっていませんが、午後2~3時 ぐらいになると、Buona seraを聞くことも多くなります。Buongiornoとの使い分けは自分の好みと感覚で。
Ciao!(チャオ!):言わずとしれた、カジュアルなあいさつの代表格。Ciaoに違和感 がなくなるタイミングは、お互いの関係の中でそれとなく分かるでしょう。慣れ親しんだ間柄で使う表現ですが、たとえばプライベートな場での出会いや学校の 学生同士なら、初対面からCiaoのこともありますし、そのへんは柔軟に。
Buona notte.(ブォナノッテ):英語のGoon nightです。せっかくですからもう一言、Sogni d'oro!(ソンニ・ドーろ)「黄金の夢を!」という素敵なフレーズをつけ加えると、夢見もひときわさわやかでは。
 次に、別れ際のあいさつベーシック。友だちと別れるときと同様、やっぱり店員さんにもお忘れなく。
Arrivederci.(アりヴェデるチ):そんなタイトルの懐メロもあったっけ?の「さようなら」のイタリア語。ri(再び)+vedere(見る、会う)という構造。フランス語のAu revoirとまったく同じリクツです。See you againの願いを込めて。でも、なんとなく、これを使うともう会えないような気がするのは、他にもっとSee you againの意味がダイレクトに伝わってくるフレーズがあるから?(それとも、こう思うのは私だけ?)
Ci vediamo.(チヴェディアーモ):こっちの方がいっそう強く再会を約束してくれ そうな気がします。アッシジで約2週間の語学研修プログラムを終えて帰るとき、世話をしてくれた現地のagenzia(代理店)のSignoreが、ため らいもなく"Ci vediamo domani!"「また明日!」と言ってくれたのが忘れられません。
A dopo.(ア・ドーポ):「またあとで」See you laterの感覚。Ci vediamo a dopo.とかArrivederci a dopo.とも言えますが、アッサリと一言で使うのが多いでしょうか。"A ~!"はあとにくる言葉によって、いくらでもヴァリエーションが広がります。A presto!(ア・プれスト;またすぐに)、A piu' tardi!(ア・ピゥ・タるディ;またそのうちに)、A domani!(ア・ドマーニ;また明日)、Alla prossima settimana!(アッラ・プろッスィマ・セッティマーナ;また来週)などなど。
 そして、最初に挙げたBuongiorno, Buona sera, Ciaoも、別れ際に使うことができます。ひとしきり話をしたあと、"Buongiorno!"と言って別れる光景もよく見かけます。ちょうど"Have a nice day!"のような感じですね。
 あいさつの仕方に、隅々まで決まりきったマニュアルがあるわけではありませんから、自分の感性を頼りに、その場の状況や空気を感じ取りながら、臨機応変に使いこなしましょう!
 (2000/5/7)