Per favore―イタリア語三種の神器

 どんな土地の言葉にも、これが使えたらともかく最低限なんとかなる、という、超基本的な文句があると思いま す。たとえば大阪なら、「もうかりまっか」「ぼちぼちでんナ」(というわけではない、今どき)。しょうもない前フリはさておき、私の独断では、 イタリア語の「三種の神器」は、Per favoreGraziePrego、この三つに尽きます。

 さて、歩き疲れてコーヒーが飲みたくなったアナタ、ふと目についたのはB・A・Rの三文字。さっそくのれんをくぐって座敷に座り(ということはないのでお間違いなきよう・・・)、
Tu: Un caffe', per favore!(ウン・カッフェ、ペる・ファヴォーれ!):コーヒー一丁、たのんまっさ。
Barista: Si, subito. ・・・Ecco.(スィ、スービト・・・エッコ) :へぇ、ただいま。・・・お待ちどォさんです。
Tu: Grazie!!(*^-^*)(グらーツィエ):おおきに。
Barista: Prego.(^_^)(プれーゴ):どういたしまして。

 アラ不思議、これだけの会話で、いと美味なるcaffe' espressoが飲めてしまいました。パチパチパチ!少々日本語訳がわかりにくかったかもしれませんので、念のため標準日本語訳をつけておきます。
アナタ:コーヒー一杯お願いします。
バールの店員:はい、ただいま。・・・さ、どうぞ。
アナタ:ありがとう!
バールの店員:どういたしまして。

 un caffe'のところをun cappuccino(ウン・カップッチーノ)と言えばカプチーノが、spremuta d'arancia(スプれムータ・ダランチャ)と言えばオレンジジュースが、un panino(ウン・パニーノ)と言えばパニーノ(パニーニ panini は複数形)が、una pasta(ウナ・パスタ)と言えばデニッシュが、un gelato(ウン・ジェラート)と言えばジェラートが、苦もなく食べられます。

 英語関係の雑誌でよく目にしたのですが、日本で生まれ育った人は、相当に英語堪能でも、然るべき場面でなか なか"Please."の一言がつけられない、と。ひじょうに流暢なEnglish speakerがいて、聞いているだけではnative speakerと区別がつかない。が、"Coffee."とだけ言って注文するのを聞いて、あ、日本人だ、とわかったとかなんとか・・・何かの記事で読ん だ記憶があります。英語圏で Magic Word と呼ばれ、親や教師が子どもたちに徹底的にしつけるというPleaseに当たるイタリア語が、Per favore です。Buongirono のページでも書いたように、イタリアでは、お客様は人間、店員も人間。コーヒー一杯注文するのでも、接する相手が人間である以上、つねに然るべき敬意を払う、というフラットな感覚をもちたいですね。商品の代価を払うだけではなく。それを表す言葉が、"Per favore."(お願いします)と"Grazie."(ありがとう)だと思います。これをきちんと使えば、一見無愛想な切符売り場のおっちゃんも、怒濤のごとくおしよせる観光客にウンザリ顔のお土産屋のお姉さんも、にっこりほほえんで、"Prego." (どういたしまして)と言ってくれるでしょう。これだけの言葉でも、うんとコミュニケーションはスムーズになるものだと、驚くほどです。もちろん、こちら が礼を尽くしても、あくまで無愛想なおっちゃんやウンザリ顔のお姉さんもいるかもしれません(まぁ、めったにいないと思いますけど)。でも、そのときは心 を広くもって、イタリア人て態度悪いで、などと決めつけずに。そんな人は日本にだってゴマンとおわするのですから。

 それでは、Parola Magicaをひっさげて、いざ魅惑の国へ!In bocca al lupo!!
(2000/5/5)